私の会計史 theme17 監査役時代(2)‐会計監査における監査役の役割‐

  藤田敬司

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企業会計審議会の「監査基準見直し」に参加

1999年(平成11年)12月,企業会計審議会の臨時委員として,監査基準を見直す作業に参加することになった。作業開始の背景には,国際的には"レジェンド問題"があり,国内的には監査に対する期待を裏切る"期待ギャップ"があった。

"レジェンド問題"とは,当時世界のビッグファイブと呼ばれた5大監査法人が,日本企業が日本基準で作成し,日本基準で監査を受けた財務諸表を世界の資本市場で使う場合には,利用者の判断を誤らせないよう警告文(legend clause)を付せと言い出したもの。これは日本基準への不信任状である。

この屈辱的なレジェンド問題の"火付け役"は,アーサー・アンダーセンだと言われていた。だが,彼らは2001年12月に経営破たんしたエンロン事件の監査人だったから,2年後に見直し作業の結果が意見書として公表された頃には,米司法当局による起訴と株主損害賠償訴訟で苦境に喘ぎ,あっけなく解散消滅していた。また,損失隠しに使われた特別目的会社(SPC)の見直しも行われた。

それはともかく,会計監査基準の見直し作業では,監査役としては次の2点を訴えた。

①ドイツで...