IFRSをめぐる動向 第104回 「のれん及び減損」プロジェクトの最近の動き

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 松永 貴志

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)の月次合同会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。

今回は,IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー(Post-implementation review)の結果を受けて審議が続けられている「のれん及び減損」プロジェクトについて,直近のIASBの審議状況を取り上げます。

IASBは,2015年6月にIFRS第3号の適用後レビューの実施結果に関するフィードバック・ステートメントを公表した後,特に重要とされた論点について,「のれん及び減損」と「事業の定義の明確化」という2つのリサーチ・プロジェクトを設定し,議論を開始しています。

本稿では,このうち特に「のれん及び減損」プロジェクトを対象に,2018年1月までの審議状況について解説します。

なお,文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.「のれん及び減損」プロジェクトの概要とこれまでの審議状況

(1)プロジェクトの概要

上述のとおり,「のれん及び減損」リサーチ・プロジェクトで...