ディスクロージャーを巡る国際的な動向 第6回 IASBによる会計方針と会計上の見積りの区別の明確化

企業会計基準委員会(ASBJ) 専門研究員 豐岳 光晴

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はじめに

2017年9月,国際会計基準審議会(IASB)は,公開草案「会計方針及び会計上の見積り」(IAS第8号の修正案)(以下「本公開草案」という。)を公表した。これは,主に会計方針と会計上の見積りの区別を明確化するために,IAS第8号「会計方針,会計上の見積りの変更及び誤謬」(以下「IAS第8号」という。)を修正することを提案するものである。

本稿では,本公開草案について概説するとともに,ASBJにおける議論を踏まえてIASBに対して提出したコメント・レターの概要についてご紹介する。なお,特段の記載がない限り,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

公開草案「会計方針及び会計上の見積り」(IAS第8号の修正案)の内容

(1)本公開草案の公表の背景

IASBは,IFRS解釈指針委員会から,企業が会計方針と会計上の見積りを区別する方法に関して,ばらつきが生じているとの報告を受けた。IAS第8号では,会計方針の変更については原則として遡及適用することが要求されるのに対し,会計上の見積りの変更による影響は将来に向かって認識することが要求されていることから,会計方針...