注記実務の留意点 第8回(最終回) 関連当事者情報

仰星監査法人 公認会計士 廣田 拓爾

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はじめに

関連当事者情報の注記は,会計基準で限定列挙された関連当事者を識別し,その関連当事者との取引(以下,「関連当事者取引」という)のうち,重要性があるものを開示するという注記である。しかし,関連当事者取引は,社内において十分に情報が共有されない可能性があり,経理担当者による網羅的な取引の識別が行われないことがある。したがって,関連当事者情報の注記は,取引の網羅的な把握が重要となる。

また,コーポレートガバナンス・コードで求められている通り,関連当事者取引は会社及び株主の利益を害する取引となる可能性があるため,関連当事者取引を適切に管理及び識別する体制を構築する必要がある。

本稿においては,基本的な開示制度の説明を踏まえつつ,関連当事者取引を網羅的に把握する手法を解説する。

(会計基準等の略称)
基準: 「関連当事者の開示に関する会計基準」(企業会計基準第11号)
指針: 「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第13号)

1.関連当事者取引の開示

(1)関連当事者取引の開示の必要性

関連当事者取引は,会社と役員等の個人との取引を含め,対等な立場で行われているとは限らず,会...