実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」の概要

企業会計基準委員会 ディレクター 西田 裕志
企業会計基準委員会 専門研究員 林 良生

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Ⅰ.はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は,平成30年3月14日に,実務対応報告第38号「 資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い 」(以下「本実務対応報告」という。)を公表した 。本稿では,本実務対応報告の概要を紹介する。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

Ⅱ.公表の経緯

平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により,「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正された。本改正では,資金決済法において仮想通貨が定義された上で,仮想通貨交換業者(資金決済法第2条第8項に規定する仮想通貨交換業者をいう。以下同じ。)に対して登録制が新たに導入され,平成29年4月1日の属する事業年度の翌事業年度より,仮想通貨交換業者に対しては,その財務諸表の内容について公認会計士又は監査法人による財務諸表監査が義務付けられている(資金決済法第63条の14第3項)。

これを受けて,平成29年3月に開催された第357回企業会計基準委員...