ハーフタイム 独裁と自国第一主義の資本主義

( 39頁)

世界で独裁政権と自国利益第一主義政治への誘惑が高まっている。戦後世界の自由と民主主義,人権尊重と平和の守り手であった米国のトランプ大統領は,従来の価値観に反旗を翻し,臆面もなく自国利益第一主義を露わにしている。2017年1月の世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席した中国の習近平国家主席は,「グローバル経済は大洋であり,われわれはそれを泳ぎ切る自信がある」と宣言し,自由貿易の尊重へと改宗する熱意及び自信をアピールした。他方,2018年1月のダボス会議に出席したトランプ大統領は,なんと保護貿易と自国ファーストを訴えた。この現象について,投資家のジョージ・ソロスは「人類の自己抑制能力が揺らぎ,後退している」と評価している(3月16日付け日経)。なぜ自己抑制を忘れるほどに危機感を募らせるのだろうか。世界の資本主義体制に危機が迫っていると言うのならば世界経済フォーラムでの発言にふさわしいが,自国ファーストは品がなさすぎる。それにしても自己抑制能力はなぜ低下するのだろうか。

人類が誕生したころは,自然の脅威や猛獣から自分たちの身を守ることが精一杯で,国家を形成しても弱肉強食の争いが当たり前であった...