世界のIFRS適用事例 Case9 棚卸資産原価の測定方法

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IFRSでは,棚卸資産は原価と正味実現可能価額のいずれか低い額で測定しなければならないとされています(IAS第2号「棚卸資産」第9項)。この原価を測定する方式としては,代替性がない棚卸資産については個別法,それ以外のものについては先入先出法または加重平均法を用いなければならないとされており(同第23項,第25項),標準原価法や売価還元法(retail method)のような方法は,その適用結果が原価と近似する場合にのみ,「簡便法」として使用が認められるという位置付けです(同第21項)。

我が国でも取扱品種が極めて多い小売業で採用されることが多い売価還元法は,IAS第2号では,「棚卸資産の原価は,棚卸資産の販売価額から適切な売上総利益を減額することにより算出され,使用する利益率は,売価を当初の販売価格よりも引き下げた棚卸資産を考慮して,小売部門ごとの平均利益率が使用されることが多い」とされています(同第22項)。

欧州大手小売企業の事例は

欧州の大手小売企業は,実際にどのような棚卸資産原価の測定方法を採用しているのでしょうか。欧州大手小売企業が採用する棚卸資産原価の測定方法は,次のように各社各...