【座談会】組織内会計士が語る会計不正と監査対応【後編】

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株式会社サンウッド 取締役管理本部長,公認会計士 澤田 正憲
日本通運株式会社 財務部連結担当課長,公認会計士 瀬戸学
日清食品ホールディングス株式会社 財務経理部主任,公認会計士 照田晋也
日本公認会計士協会 常務理事,公認会計士 増田明彦

<編集部より>

監査人と財務諸表作成者の2つの視点や経験を持つ「組織内会計士」による座談会。会計不正を議論した【前編】( No.3360・20頁 )に続き,今回の【後編】では監査対応や会社法と金融商品取引法の開示・監査一元化,監査法人のローテーション等がテーマとなる。「監査工数を減らす仕組み作りとして,会計システムのデータを監査法人と共有化する」など,より効率化するための取組みについても語って頂いた。

1.組織内会計士が監査対応をすることの強みとは ~監査の状況を知る交渉役に

増田  監査対応についてお話を伺いたいと思います。皆さんは,公認会計士という監査人側の側面と,上場会社の経理担当者という財務諸表作成者側の側面と,両方の素養をお持ちです。2つの面を持つ組織内会計士が監査対応をすることで,どのようなメリットがあると思われますか。

照田  例えば監査しやすい資料の作り方や出し方を行えるので,効率的な監査に寄与できる部分はあると思います。監査調書に使えるような資料を事前に社内で作っておいて,それをそのまま出せば追加質問等も少なく,効率的に監査法人とコミュニケーションできるのではないでしょうか。データを明示してビジネスの実態を説明し,その上で「この会計基準を参照して結論は何々です」と伝える形で資料を用意しておけば,監査もしやすいですし,会社にとっても数年後に「あのときの会計処理はどうだった」と見た時にわかりやすいですよね。

その他,監査上でポイントになりそうな事象が発生した際は,早い段階から監査法人と情報共有を行うことで,決算上のサプライズを減らすことができると感じています。また,時には重要な会計処理方法について,監査法人と意見が対立することもあります。いわゆるグレーゾーンの見積りや,会計基準に明記されていないケースについて複数の解釈があり得る場合などです。そういう際は,会社側も深く会計基準を理解した上で,ビジネスの実態をどういう処理に落ち着かせるか,監査法人とギリギリの交渉を行います。そういう時に組織内会計士が交渉役や参謀役になることで,会社側も「ビジネ...