【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第3回 旅するデータ

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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筆者らは,投資家等情報利用者を中心に自主的に集まり,IFRS財務諸表の課題について議論するワークショップを開催している。題材は基本的に参加者が持ち寄る実際の開示事例であり,これを起点にIFRSの開示の問題を議論している。本連載ではそこで扱った「投資家がOperatingを重視する理由」( 3311号 )や「M&Aの開示」( 3333号 )などの議論を紹介してきた。今回は年初に開催したディスカッションから,AI等の議論が盛んになる中での財務諸表のデジタル化の現状,その利用状況,そしてデジタルレポートの利用ニーズの根源となっているアナリストや投資家の現況等につき,どのような意見が交わされたのかをまとめておきたい。

1.デジタル・レポーティング

財務諸表の情報がどのようにデータ化され,どのように市場関係者の間を渡り,最終的に分析のフレームワークにセットされるのか,そしてどのようにして投資判断に用いられるのか――。その全容は,財務諸表に関わる会計士,経理,投資家といった関係者にも分かりにくい。このテーマを選んだ理由は,もともとはIASBからの提案であった。国内では話題となる機会が比較的に少ないが,IASB...