会計不正の構造【file14】事実の隠ぺいに基づく架空売上計上

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・タイプ(不適の種類):架空売上高計上

・業態・業種:遺伝子検査サービス,遺伝子受託解析サービス

・手法・手口:①売上に係る買戻し請求権を別紙で対応しその別紙を隠ぺいする。

②売買契約書等を作成せずプライベートカンパニーからの入金で売上を偽装する。

今回は子会社B社の株式減損回避及び上場維持に必要な売上高を確保しようとして,売上を偽装したA社の事例をとりあげる。

1.会計不正の概要

(1)会社の状況

遺伝子検査を主な事業とした会社であり,上場以後数度しか営業利益を計上できていない会社である。上場直後は,資金は潤沢であっても継続して損失計上していると資金は枯渇してくる。資金がなくなってくると増資を繰り返して資金を調達してきたようである。ベンチャーとして投資家に事業の将来性をアピールして増資してきたと推測する。

(2)不正の動機

子会社B社で売上を計上して,B社株式の減損損失計上を回避し,A社でこれ以上利益が落ち込むことを防ごうとした。また,上場を維持するために必要な売上高は1億円であるが,それを割りそうになったことから,A社は期末月に必要売上高を偽装して上場維持しようとした。

(3)不正の手口

① 子会社B社...