<トップ・インタビュー>不正防止に向けCFEの知見活用を

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日本公認不正検査士協会 理事長 藤沼亜起 氏

――日本公認不正検査士協会の理事長に就任されました。どのような思いでお引き受けになったのですか。

私は公認会計士として長年企業の監査に携わってきました。また最近の10年間は,社外役員として,会社の取締役会の構成員としての立場からコーポレートガバナンスの一翼を担ってきましたが,東芝事件などを契機に「何度も不正が繰り返されるのはなぜか?」と考えるようになりました。そうした中で公認不正検査士(CFE)の資格試験に接してみて気づかされることがあったわけです。

CFEは,その主な任務として,不正の摘発や検査のみならず,「不正の事前防止や抑制」を大事にしています。検査にあたる不正検査士の視点を理解することが,監査人にとっても,また社外役員にとっても大いに役立つものであることが分かりました。「大事は小事より起こる」という視点から,CFEの資格試験を通じて勉強する意義を皆さんに伝えていきたいと思います。

――現状,CFE資格の認知度はどの程度ですか。

日本では,会員は1,800人程度,うちCFE資格者は1,200人程度まで増加しているものの,社会的な認知はまだまだです。海外では,名刺にCPA(公認会計士)やCIA(内部監査人)などの資格に加えて,CFEも記載されていて,名刺を見ればその人の専門領域が明白です。日本でも自身の専門領域を示す意味でCFEが表記されるようになってほしいですね。

――2000年以降,日本でも企業の不祥事・不正事件等が続き,会計・監査分野での制度対応も進みました。こうした取り組みによって企業不正の傾向などに変化は見られますか。

米国では,エンロン社やワールドコム社の大型会計不正事件を受け,会計,監査及びコーポレートガバナンスを対象とした包括的な法律である企業改革法(SOX法)が成立しました。日本でも,公認会計士法の改正を伴う公認会計士・監査審査会(CPAAOB)の設置や監査法人の有限責任化,課徴金制度,内部統制報告制度の導入などの制度改正が進められました。しかし米国においては,SOX法が"包括的"な対策法であったことから,特にその効果が大きいともいわれますが,経営者に対する罰則の強化がありました。ここが日本との大きな違いです。以降,米国では大型の不正事件が起きていませんが,日本ではオリンパスや東芝などの事件が起きてしまいました。...