<INTERVIEW>わが社のIFRS15号対応 日本の収益認識基準の適用に向けたヒントをきく 第3回 株式会社NTTドコモ

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株式会社NTTドコモ 財務部 制度担当課長 馬渕 伸子
 制度担当 岡本美智子
 制度担当 古川  拓
 制度担当主査 光岡 司郎

<編集部より>

「収益認識に関する会計基準」が2021年4月1日以後開始事業年度より適用される。同基準は2018年1月1日以後開始事業年度より適用された国際会計基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」をベースとしており,IFRS任意適用企業の取組みは「先行事例」として,日本基準の企業にとって今後の検討に役立つ。今回は,株式会社NTTドコモの財務部の馬渕伸子氏(制度担当課長),光岡司郎氏(制度担当主査),古川拓氏(制度担当),岡本美智子氏(制度担当)の4名に話をきいた。

1.IFRS適用の経緯等

――はじめに,IFRSを任意適用した経緯から教えてください。

馬渕氏  ドコモがIFRSを任意適用したのは2019年3月期第1四半期からですが,IFRS適用に関する検討を開始したのは2010年頃とかなり前からとなります。2009年に企業会計審議会より日本におけるIFRS適用に関する公表がなされ,IFRSの強制適用の可能性が出てきたタイミングです。その後日本のIFRS適用への流れがトーンダウンしたのに応じてドコモも最低限の検討を続けていましたが,IFRS15号については適用後の影響が非常に大きいと言われていたことを踏まえ,公開草案の時点から検討を開始していました。IFRS適用を2年後と発表した2016年には主要な論点は整理していましたが,改めて見直したときに,過去に整理していた論点の対象となるサービスが変わっていたり,新しいサービスが出ていたりしたことから再考しなければなりませんでした。これは比較的短期間でサービスや提供モデル等が変わる我々の業界だからこそかもしれません。またドコモのポイント制度などは急激に拡大し様々な取引形態が発生していたため,ここ1~2年で集中して検討してきたところです。

特に最後の1年は最も忙しく,施策ごとに結論づけた会計方針を並べて矛盾がないか確認したり,ビジネスの実態に本当に合っているかについて,会計処理のシミュレーションを通じて検証を行ったりしました。更には同業他社であるKDDI様やソフトバンク様とも数回に亘り意見交換をさせてもらいました。同じようなサービスに対する論点について,どのような基準,考え方に基づいて整理しているか意見交換...