IFRSをめぐる動向 第109回 開示に関する取組みの最近の動向

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 井上 雅子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,IASBが2011年に公表した意見募集「アジェンダ協議2011」へのコメント対応として,IFRSにおける開示原則の開発を表明して以降,今日まで継続している「開示に関する取組み」についての最近の検討状況を取り上げます。

なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.これまでの経緯

2011年7月,IASBは,「IASBの将来の戦略的優先事項」および「更なる改善のために最も優先すべき財務報告の領域」についてフィードバックを求めるために,意見募集「アジェンダ協議2011」を公表しました。これに対するコメントでは,開示について,現在の開示要求の下では財務諸表作成者に重い負担を強いる一方で,財務諸表利用者の企業の業績に対する理解に資さない開示が目立つとして,財務報告書における開示の有効性に対して広く懸念が示されました。そこで,IASBは,これらのコメントを踏まえ,将来に向けて,概念フレームワークのプロジェ...