ハーフタイム 「保守主義」と「慎重性」は同義語か,それとも…

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わが国の企業会計原則には「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性があるときは,これに備えて健全な会計をしなければならない」という保守主義(安全性)の原則がある。

それはドイツの商法会計でも重要な会計原則だが,近代会計学の祖シュマーレンバッハ(1873~1955)は『動的貸借対照表論』(B/Sを損益計算の手段と位置付けた)の中で,注意深い経営判断を「慎重性の原則」と呼び,次のように述べている。「財産100DMが200DMになるチャンスもあるがゼロになるリスクがある場合,好機と危険が同等なりということができない」,「チャンスがリスクと同等または多少上回っても,失敗すれば会社が破たんするような商売に手を出す人は,一個の賭博者であって尊敬に値する商人ではない」。学者になる前には会社経営に携わった経験がある人物からのシビアな警告である。

IFRSの旧概念フレームワーク(2010)では,「慎重性」は中立性に反しバイアスを生むとみなされ削除されたが,周知のように2018年改訂版では8年ぶりに復活した。

そこで誰しも抱く疑問は,①そもそも保守主義と慎重性は同義語かそれとも異なるのか,異なるとすればどう異なるの...