書評 Sean Stein Smith 著 伊藤和憲・小西範幸 監訳『戦略的管理会計と統合報告』

(同文舘出版刊/本体2,900円+税)

日本商事仲裁協会大阪事務所 所長 神藤 浩明

( 43頁)

リーマン・ショックから早10年。グローバル化と反グローバル化との相克の中で,企業を取り巻く環境は依然として霧の晴れない状況が続いている。だからこそ時代は経済・経営・会計の在り方について包括的な視点から問い直すことを求めている。すなわち,伝統的な財務情報のみの開示とは異なる統合報告に,戦略策定を支援する従来の管理会計ではなく,業務情報を財務情報へ変換し,戦略的意思決定を促す戦略的管理会計を能動的にどのように組み込むか,これが本書を貫くテーマである。チャレンジングかつハードルの高い試みであるだけに,おそらくその旅路に終わりはないだろう。

本書は,ラトガー大学実務専門の専任講師であるスミス氏が2017年に執筆した"Strategic Management Accounting : Delivering Value in a Changing Business Environment Through Integrated Reporting "の翻訳書である。ソフトカバーの装丁,200頁足らずのコンパクトな分量,各章末に配置された解説もしくは参考情報の付録は,時間に追われる実務家にとっては喜ばし...