ハーフタイム ビジネスモデルは会計測定の決め手になるか

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ビジネスモデルという用語が初めて会計基準の中で使われたのはIFRS9(2009)だった。内外の会計学者はその後,財務報告にビジネスモデルを持ち込むことについて様々な角度から賛否両論を繰り広げてきた。欧州のEFRAGや日本のASBJなどIFRSの代表的なユーザー団体も「財務業績を測定する際には,ビジネスモデル乃至ビジネス活動が重要な役割を担うべきだ」と提唱してきた。たしかに,企業を「価値創造型ビジネス」(インプットを変換・結合・加工・販売することによって収益(revenue)を生み出す製造業・販売業・サービス業など)と「市場価格変動型ビジネス」(長期・短期の価格変動から利得(gains)を得るトレーディングビジネスなど)に大別すると,前者の会計測定には取得原価や償却原価がふさわしく,後者には公正価値が合う。ところが改訂概念フレームワーク(2018)は「異なる環境下では異なる測定法を」と言うに止まりビジネスモデルは会計概念化されていない。

ではビジネスモデルに係る会計学者達の期待はなぜ満たされなかったのであろうか。

考えられる事実は,"営利企業はあらゆる環境変化に対応して利益追求を優先する,そ...