書評 EY新日本有限責任監査法人 著『業種別不正パターンと実務対応 100社事例分析』

解説

 公認会計士・税理士 荻窪 輝明

(中央経済社刊/本体2,400円+税)
( 32頁)

第1章「不正はなくならない!」,同感だった。企業経営には多数の人間が関わっている。動機が生まれ,正当化してしまう事由があり,機会を許すことによって幾多の不正が発生し,時には大きな事件として報じられるほどの不正が発覚してきた。放置すれば社会的信用を失い,企業の存続にも影響する不正は事後の代償が非常に大きいだけに,業種や事業,職階を問わず全ての社会人が学ぶことが有益なテーマの一つであり,その最良の教材は生きた不正事例である。

本書は,会計監査の現場経験などを通して得られ,監査法人内に「組織知」として形成されている様々な不正のパターンが,実務家である現役の公認会計士ならではの視点から分析,解説されている。業種別だけではなく,製造販売や商品販売といった事業類型別の事例分析に加え,本社や子会社など不正の発生場所,職階,不正の金額規模別に至るまでの踏み込んだ分析を可能にしているのは,多数の他社事例を蓄積できる監査法人のなせる業であり,第2章の「100社の不正事例分析」を眺めるだけでも一読の価値はある。

不正,監査法人と...