時事談論 vol.13「英国の監査制度改革」

解説
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1. カリリオン社の破綻

英国で,監査が大変なことになっている。日本にいると,英国のニュースはBrexitの問題ばかりで,あまり実感がないが,監査制度も大きく揺らいでいる。

発端は,2018年1月に英国建設大手のカリリオン社(Carillion plc)が約16億ポンド(約2,440億円)の負債を抱えて破綻し,粉飾決算が明らかになった事件だ。同社は,英国建設業第2位であるだけでなく,公共事業に強みを持ち,英国の交通や公共施設の建設工事を政府から請け負い,英国内外の従業員数が約4万3,000人に上り,多くの下請け会社を抱えていることから,今後の経済的な影響も懸念されている。

同社の破綻は,長期請負契約において,コスト管理ができず採算が悪化して,資金繰りが行き詰まったものだ。同社が破綻に際して行った説明によれば,同社は「ロールス・ロイスを作るのにミニクーパーの支払」しか受け取れないような,収益性の低いプロジェクトを多数抱え込んでいたとのことで,リスクマネジメントが不十分だったという。

長期請負契約において,追加工事を含めて,コスト管理ができないというのは,カリリオン社だけの問題では...