時事談論 vol.14「ROEから考えるステレオタイプからの脱却」

解説
( 32頁)

●ROEに関数r報道とIRでの現状

ROE(自己資本利益率)は,企業の自己資本に対する当期純利益の割合で計算される財務指標である。その計算式は,ROE=当期純利益÷自己資本であるが,ROE=売上高利益率(当期純利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)×財務レバレッジ(総資産÷株主資本)に分解することが出来る。このため,①収益性,②効率性,及び③財務戦略の3要素の総合的な組み合わせで戦略を練ることができることから,経営のKPIとして利用されることがある。一般的なマスコミによるROEの解説では,機関投資家が投下した資本に対し,企業がどれだけの利益を上げられるのかという観点から,企業に対し一定のROEを要求している最も重要な財務指標と言われてきた。ところが,企業が海外の投資家及びアナリスト向けに実施する財務ロードショウにおいて,実際にROEが問われることは少なく,具体的に機関投資家から要求されるのは,配当金の増額及び自社株買いというのが現実である。

●低成長の経済下でROEを上げること

このROE固有の問題ではないが,バブル崩壊以降の30年を見てみると,ROE向上は必ずしも好...