ハーフタイム 市場観の違いが会計と政治社会に及ぼす影響

解説
( 35頁)

一見難しそうな専門知識であっても,一段上の普遍的(抽象的なことが多い)原則やその考え方の背景を理解したあとならば,割合すらすら理解できるものである。まず具体例から入るのも悪くないが途中で道に迷い易い。抽象的原則を先に押さえたほうが,適用結果についても説明責任を果たし易く,同じ知識を応用できる課題も範囲もぐっと広がる。

最近30年間のわが国会計制度の変化と金融・財政制度への影響をより良く理解する為に,世界の資本主義を席巻している米国型新自由主義と,秩序ある自由主義を掲げて社会的市場経済システムを堅持しているドイツ・北欧型資本主義を比較してみたい。

わが国の金融・財政制度は,この30年間にドイツ型から米国型へ(会計は公正価値を多用するIFRS型へ)変わってきた。それが果たして「進歩」と評価できるかどうかは疑問だが,それはグローバルな環境変化に合わせた「進化」だったことは認めざるを得ないだろう。

さて,非現実的な「合理的経済人」と「合理的市場」の仮設に基づくM・フリードマンの『資本主義と自由』は,企業は「株主利益の最大化を図る道具」であり,賃上げを求める労働組合は「反社会的存在」だ...