【投資家が求める開示】企業分析の視点からみたIFRS財務諸表 第4回 有報は株主総会の前に

解説

株式会社野村総合研究所 上級研究員 三井 千絵

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2018年末,アジア企業に投資する投資家団体,Asian Corporate Governance Association (ACGA)が2年に一度行なっている「CGwatch」という“国別ガバナンス達成度ランキング”が発表された。12カ国中,日本は前回の発表時(2016年)の4位からランクを下げ7位となった。評価は多岐にわたるため,原因は一つではないが,大まかにいうと,他のアジア諸国の対応が急速に進み,追い抜かれてしまった…という感じだ。

そこで筆者らは,定例としているワークショップ を年明けに開催し,これを題材に取り上げた。そして,日本の何が他国に劣るのか,海外の投資家からどう見えるのかを考えることにした。

1.アジアの中の日本

今回日本を追い越したのは,マレーシアと台湾,タイ,そしてインドは日本と同位につけた。ランキングの取り方は,ガバナンスの向上に重要な7つのカテゴリ(①政府,公的機関のガバナンス,②規制当局,③コーポレートガバナンスに関するルール,④上場企業のガバナンスの状況,⑤投資家,⑥監査人,監査人の監督機関,⑦市民...