株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスCFOインタビュー 「事業を理解し,数字で語る」―CFOの役割,ガバナンス,投資家との対話等について―

解説
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス 最高財務責任者 渡邉一治
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<編集部より>

本誌はこのほど,株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスの最高財務責任者(CFO)である渡邉一治氏にインタビューを行った。同社は「最高の『物語』を提供することで,世界中の人々の幸福に貢献する。」という企業理念のもと,「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などのゲーム事業を中心に,世界中に良質なエンターテインメントコンテンツを提供している。「CFOは事業がわかることが大切で,なおかつそれを数字で語れる必要がある」と語る渡邉氏。変化が激しいエンターテインメント業界における,CEOの右腕としてのCFOの役割,監査対応やガバナンス,そして今後のビジョンについて話をきいた。

1.経理財務部門の体制など

――本日はよろしくお願いします。最初に,経理・財務部門の体制を教えていただけますか。

渡邉一治氏(以下,「渡邉」)  経理財務機能は3つの部署に分かれています。1つは経理財務で,決算及び財務を担当する者が12名おります。次に販売管理。ゲーム関連の印税計算やパッケージゲームの入出荷・売掛金の管理をしていまして,ここが9名です。また別のグループで事業管理,予算や管理会計に携わっている者が5名おりますので,合計で26名の体制です。そのうち,派遣社員は5名です。

――近年,企業の中で活躍される会計士の方も増えていますが,御社では会計士資格をお持ちの方はいらっしゃいますか。

渡邉  私と,経理財務のジェネラルマネージャーの2名です。それから,私の前任のCFOで,現社長(CEO)の松田(洋祐)も公認会計士です。経理財務チームには,税理士試験の科目合格者が複数名います。

――御社のようにCEOもCFOも会計士という会社はめずらしいですね。渡邉様は監査法人勤務のご経験は長かったのですか。

渡邉 新卒で当時の監査法人朝日会計社(現:有限責任あずさ監査法人)に入所し,10年間,上場会社の監査やIPO支援などを経験しました。その後,監査法人がアーサーアンダーセンのパートナーシップに加盟し,ビジネスコンサルティング事業を立ち上げることになり,その日本法人である朝日アーサーアンダーセンに行くことになりました。ニューヨークで武者修業し,日本で7人で始めた会社が600人を超えるところまで育ち,さてこれからと...