Q&Aコーナー 気になる論点(243) 株式報酬の会計処理(2)

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

‐無償取得の場合‐
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 2019年5月27日公表の日本公認会計士協会 会計制度委員会研究報告第15号「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(以下「研究報告」)では,現行の会社法の規定を離れ,本来あるべき会計処理を考察した場合,事前交付型の自社株型報酬において,条件未達により会社が株式を無償取得した部分は,費用を戻し入れ,株主資本を修正すべきという考えを示しています。これは,なぜでしょうか。

それは,ストック・オプションと類似し,取引として完結するのは,契約条件に沿った給付を果たした場合と考えているからのようです。しかし,費用と株主資本とを修正するのは,会計処理のねじれをもたらすものであるため,費用の戻入れに対応するような暫定的な資本のあるべき会計処理としては,株式を発行していたとしても株主資本ではなく,新株予約権に準じた科目によるべきと考えられます。

<解説>

事前交付型の株式報酬(1)‐現行の実務による処理

現行の会社法上,株式の無償発行が認められないため,事前交付型の自社株型報酬の代表的なものである譲渡制限付株式(いわゆ...