【TOPICS】のれんの会計処理に関する国際的な議論の動向

解説

有限責任監査法人トーマツ  山口 奈美

FASBによるコメント募集の公表とIASBにおける議論の進捗
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1. はじめに

米国財務会計基準審議会(FASB)は,2019年7月9日に,コメント募集「識別可能な無形資産とのれんの事後の会計処理」を公表した。国際会計基準審議会(IASB)も,のれん及び減損のリサーチ・プロジェクトとして,のれんに関する議論に取り組んでいる。

本稿では,FASBが公表したコメント募集の背景及び概要,並びに関連するIASBにおける最近の議論の動向について,のれんの償却を巡る議論を中心に解説する。なお,本解説は筆者の私見によるものである。

2. FASBのコメント募集の背景

現行の米国会計基準では,公開企業に適用される基準書において,のれんを償却することは認められず,減損テストのみが要求される

FASBは,近年,のれん及び企業結合時の無形資産の会計処理によって有用な情報が提供されているか,財務諸表利用者が得る便益が,のれんの減損テストに関するコストと複雑性を正当化するものであるかについて,利害関係者からの懸念が聞かれているとしている。本コメント募集は,そのような懸...