インセンティブ報酬の会計処理及び開示に係る実務上のポイント

解説

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 吉田 剛

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Ⅰ はじめに

日本公認会計士協会(会計制度委員会)は,2019年5月27日に会計制度委員会研究報告第15号「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告」(以下「研究報告」という。)を公表した。

本稿では,この研究報告の概要を解説するとともに,インセンティブ報酬の会計処理及び開示に係る実務上のポイントについても,必要に応じて触れていきたい。

なお,文中意見に係る部分は筆者の個人的な見解であって,所属する法人及び諸団体の公式な見解ではない点,予め申し添えさせていただく。

Ⅱ 研究報告の公表の背景

1. 研究報告の公表までの経緯(研究報告Ⅰ1参照)

近時,上場企業においていわゆるインセンティブ報酬(定義については後述のⅢ3参照)と呼ばれるような株価連動型,業績連動型の役員報酬制度の導入が拡がっている。これは,2015年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」において,コーポレート・ガバナンス強化(改革)の1つの施策として,中長期的に企業価値を向上させることを目的とした役員等(役員及び従業員(執行役員を含む。)を指す。以下同じ)...