企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等の概要

解説

元・企業会計基準委員会 専門研究員 鈴木 和仁

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Ⅰ.はじめに

企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は,2019年7月4日に,企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等(以下「本会計基準等」という。)を公表 した。本稿では,本会計基準等の概要を紹介する。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見であり,企業会計基準委員会の見解を示すものではないことを,あらかじめ申し添える。

Ⅱ.本会計基準等公表の経緯

我が国においては,金融商品などで時価を算定することが求められているものの,これまで,当該時価の算定方法に関する詳細なガイダンスは定められていなかった。一方,国際財務報告基準(以下「IFRS」という。)や米国会計基準では,公正価値測定についてほぼ同じ内容の詳細なガイダンスを定めている。また,IFRS及び米国会計基準では,公正価値に関する開示も定めているが,我が国の会計基準では,これらの多くを要求していなかった。

これらの状況を踏まえ,主に金融商品の時価に関するガイダンス及び開示に関して,国際的な会計基準との整合性を図る取組みに着手し,公表されたのが本会計基準等である。...