公認会計士・監査審査会事務局　審査検査室長　野村 昭文

はじめに

公認会計士・監査審査会（以下「審査会」という。）は，平成16年４月の発足以降，公益の確保及び投資者保護の観点から，我が国における監査の品質の確保・向上のために監査事務所（監査法人又は公認会計士）に対する検査を実施してきた。

審査会検査における指摘事例については，平成20年２月に「監査の品質管理に関する検査指摘事例集」（平成24年から「監査事務所検査結果事例集」と改題）として取りまとめ，それ以降毎年改訂し，公表しているところである。

このような事例集の公表は，審査会としての監査の期待水準を提示し，監査事務所による監査の品質の確保・向上に向けた自主的な取組を促すとともに，上場会社等の取締役・監査役や投資者等の市場関係者に対する参考情報を提供することを目的としているものである。

去る７月30日に公表した令和元事務年度版の監査事務所検査結果事例集（以下「本事例集」という。）では，最近の指摘事例を追加するとともに，不備が発生した背景もできるだけ記載するなどの改訂を...