<INTERVIEW>監査役としてKAMに期待すること

解説
花王株式会社 常勤監査役 藤居 勝也
―企業価値を高めるものとしてのKAM―
( 12頁)

<編集部より>

2020年3月期から早期適用,2021年3月期から原則適用となる「監査上の主要な検討事項」(KAM)。監査役と協議した事項から選定されるなど,KAMにおいて監査役が果たす役割も大きい。そこで本誌は,KAMへの対応状況などについて監査役へのインタビューを実施。

第1回は花王株式会社常勤監査役の藤居勝也氏に話をきいた。

1.KAMの受け止め

――まずは総論的なお話からですが,今回導入されたKAMというものをどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

弊社は主に消費者向けの商品を製造・販売していますから,世の中や社会の変化というものに対して感度は高く持たなければなりません。そうした中で少しでも早く変化に対応していこうという志をもった会社として,今回のKAMについても前向きに進めていきたいと考えています。

また我々と同業のグローバル企業ではすでに導入し,開示しているところもあります。それらも参考にしながら,今後試行し,適切なタイミングで意思決定をしていく,ということになります。弊社は外国人持ち株比率が45%以上もありますので,そうした方々とのコミュニケーションという観点からも,KAM導入は必然的な流れだと思います。

これを機に,より透明性を高めることによって,株主・投資家との信頼を高めていこうということがKAMの主旨だと理解していますので,そのためにどうしていくべきかを考える必要があります。実際にKAMを文章にするといったことだけではなく,ステークホルダーとの議論の在り方自体も変わって然るべきだと思います。

2.早期適用の検討等

――先ほどの質問の中でもお答えいただいた「早めに対応」というお話にも関連しますが,KAMの適用時期に関して,早期適用の有無や,適用時期を検討された経緯,現在の準備状況といったことをお伺いできますか。

はじめに,我々は12月決算ですので,3月決算の会社とは時期が異なる,という点はご留意ください。

金商法監査にKAMを導入するための監査基準の改訂は,2018年の5月に公開草案が公表され,7月に最終化されました。公開草案の時点で,それを受けた我々の対応について社内で議論を始めました。また,社外監査役からも「早めに検討すべきではないか」というご意見もいただきました。

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