Q&Aコーナー 気になる論点(247) 企業結合における無形資産の認識‐FASBによるコメント募集から(1)‐

解説

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 米国財務会計基準審議会(FASB)は,2019年7月9日にコメント募集「識別可能な無形資産及びのれんの事後の会計処理」(以下「コメント募集」)を公表しています(コメント期限:2019年10月7日)。コメント募集には,のれんの償却や減損の会計処理のみならず,企業結合における無形資産の認識を修正すべきかどうかが含まれています。これは,なぜなのでしょうか。

それは,コメント募集では,一定の識別可能な無形資産をのれんに含めることによって,コストと便益の課題に対応できるか否かを検討していることによります。

<解説>

FASBのコメント募集(1)‐目的と背景

コメント募集において,FASBのスタッフは,企業結合で取得された一定の識別可能な無形資産及びのれんの事後の会計処理に関するプロジェクトのアウトリーチでは,様々な意見があり,現状,便益が公開企業のコストを正当化するものかどうか明確ではないとしています(1頁)。

これまでFASBは,のれんの減損処理につき,すべての企業に対して[図表1]の会計基準更新書(ASU)を公表し簡素化しています(2頁...