IFRSをめぐる動向 第117回 フライトの遅延またはキャンセルに対する補償(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」)に関するアジェンダ決定

解説

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士  井上 雅子

  

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はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)で検討された「遅延またはキャンセルに対する補償」に関するアジェンダ決定について説明します。

IFRS ICは,関係者から寄せられた実務上の問題に関する要望書について検討を行い,基準開発のアジェンダに追加すべきか否かの評価を行っています。これは,企業によるIFRSの適用をサポートする活動の一環としてなされているものです。この評価の過程で,寄せられた要望書に関する論点を基準開発のアジェンダに追加しないことを決定することがあります。このような決定は,IFRSの適用に関するIFRS ICの見解とともに,「アジェンダ決定」として一般に公表されます。「アジェンダ決定」自体に規範性はないものの,IFRSの適用においては有用なものといえます。

今回の議論は,欧州証券市場監督局(ESMA)が提出した要望書から始まりました。ESMAはこの要望書において...