時事談論 vol.36「監査役の奮起に期待?」

解説
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●ガバナンスの有効性

我が国にコーポレートガバナンス・コードが設定されたのは2015年6月であり,既に4年が経過している。当時,コーポレートガバナンス・コードは,“攻めのガバナンス”と称されて,経営者が果敢にリスクテイクをしてこれまでため込んだ潤沢な資金を投資活動に振り向け,今後の日本の成長をリードする経営者を全面サポートするとの位置づけであったように記憶している。

しかし,上場会社が約3,600社(うち一部上場会社は約2,000社)を擁する我が国資本市場においては,新聞等で知る限り,攻めに転ずる行動変革を伴うような経営者は限定的であり,多くの日本企業における経営者の慎重な姿勢は相変わらずのようである。水面下で四苦八苦し,現在仕込み中のところもあるのかもしれないが,今の厳しい環境下において果敢にチャレンジしていることを感じさせる,経営者の熱いメッセージがなさすぎるような気がする。

むしろ,通報等による不正事件の対応に追われ,会社決算に直接影響する案件については,上場会社の決算発表の延期,有価証券報告書等の提出期限の延長,過年度決算の訂正など,我が国の資本市場の信頼性を損なう事...