財務報告のための公正価値の測定方法と開示の実態

解説

関西学院大学大学院 教授 杉本徳栄

関西学院大学大学院 研究科研究員 玉川絵美

IFRS任意適用企業によるIFRS第13号「公正価値測定」の適用状況
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はじめに―目的と調査対象―

国際財務報告基準(IFRS)には,公正価値の使用が要求または容認される場合がある。2013年1月1日以降開始する事業年度から適用が始まったIFRS第13号「公正価値測定」は,この公正価値の定義,単一のIFRSで公正価値の測定に関するフレームワークおよび資産と負債の公正価値をどのように測定・開示するかを示し,要請したものである。

本稿は,「連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則」(連結財務諸表規則)第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たし,第93条の規定を適用して国際会計基準審議会(IASB)によって公表されたIFRSに準拠して連結財務諸表を作成する,いわゆる「IFRS任意適用企業」を対象に,IFRS第13号による財務報告のための公正価値の測定方法と開示の実態を調査し,分析したものである。調査対象は,2018年4月期~2019年3月期の有価証券報告書においてIFRSに基づく連結...