時事談論 vol.39「KAMは記載されているか」

解説
( 44頁)

●KAMの適用開始

2020年はどんな年だろうか。おそらく10年後,20年後に振り返ったときには,東京オリンピックが開催された年として記憶されるのだろう。総選挙もあるかもしれないし,願わくは,災害のない一年であってほしい。

少なくとも,監査の世界では,当面の間(数年のうちに,監査法人の強制ローテーション制が始まったり,東芝に類するような巨額の粉飾決算が発覚したりしない限り),監査上の主要な検討事項(Key Audit Matters: KAM)が記載された監査報告書が公表され始めた年ということになるだろう。

KAMは,2018年7月の監査基準の改訂で導入され,2021年3月決算に係る財務諸表の監査から適用することとなった。ただし,「それ以前の決算に係る財務諸表の監査から適用することを妨げない」ともされて,先行適用が認められている。

そればかりではない。先行適用に関して,2018年4月に開催された企業会計審議会監査部会では,金融庁からの説明資料において,次のように述べられているのである。

「2.適用時期

監査に関する情報提供の早期の充実や,実務の積上げによる円滑な導入を図る観点から,...