<IFRS COLUMN>暖簾に腕押し 第2回 わが社はIFRSを採用すべきか(その2)

解説

国際会計基準審議会(IASB)前理事  鶯地 隆継

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日本にIFRSは必要か

日本では日本基準,米国基準,IFRS,修正国際基準(JMIS)の4つの会計基準から,自社が適用する会計基準を選択できる。このため,どの会計基準を選択するのかということから,説明責任は始まっていると前の稿( 本誌No.3440 )で述べた。このようなシステムは世界的には稀である。通常は1つの上場株式市場で適用される会計基準は1つでなければならないと考えられている。それは複数の会計基準を許容すれば,会社ごとの比較可能性が無くなるからである。このため,IFRSを導入することイコールIFRSを全上場企業に強制適用することと考えられていた。

ただ,IFRSを強制適用するということは非常に重い意味を持つ。なぜならば,IFRSを強制適用するということは,日本の会社が適用しなければならない会計基準を日本自身で決定するという権利を喪失してしまうことになるからだ。もう少し踏み込んで言えば,国家主権の一部を喪失すると言っても良い。

このような考え方は,日本における会計基準の位置付けを見てみると,至極自然な考え方と言える。なぜなら...