租税調査会研究報告第35号「法人税法上の役員報酬の損金不算入規定の適用をめぐる実務上の論点整理」の解説

解説

北斗税理士法人 代表社員 公認会計士・税理士 新川 大祐

PwC弁護士法人 パートナー 弁護士・公認会計士 北村 導人

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1.はじめに

日本公認会計士協会は,会員が行う税務実務において参考とされるべく,2019年10月7日付けで,租税調査会研究報告第35号「法人税法上の役員報酬の損金不算入規定の適用をめぐる実務上の論点整理」を公表した。本稿では,この研究報告の概要について解説する。なお,文中,意見に関する部分は私見である。

2.研究報告第35号公表の背景

今日,経済のAI・IT化及びグローバル化が進展する中で,企業の競争は一段と厳しさを増している。このような状況において,役員報酬の改革を通じて,会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促すことが期待されている。具体的には,経営陣にそのインセンティブを付与することができるよう,金銭だけではなく株式による報酬や業績に連動した報酬等の導入を図る整備が進められている。一方で,不適切会計による巨額の会計上の修正等や投資の失敗による巨額損失発生に対し,報酬の払戻しを強制するリスク管理メカニズムの導入を求める動きも見られる。

税法においても,役...