<INTERVIEW>「収益認識に関する会計基準」早期適用会社に聞く 第1回 三井化学

解説
三井化学 経理部財務グループ 主席部員 高田 和明
三井化学 経理部財務グループ 主席部員 谷 明彦
( 12頁)

<編集部より>

「収益認識に関する会計基準」(以下,収益認識会計基準)は,2022年3月期から原則適用となるが,早期適用も認められている。本誌が上場会社を調査した結果,早期適用した旨を有価証券報告書等の「会計方針の変更」に注記した会社は,合計36社ある(昨年9月23日時点。 No.3416・2頁 )。

今回インタビューにお答え頂いた三井化学株式会社(東一,化学,日本基準)は,収益認識会計基準を2020年3月期第1四半期から早期適用した。また,同社は2019年11月6日,従来の日本基準に替えて,国際会計基準(IFRS)を任意適用することを公表している。任意適用は,2021年3月期第1四半期から。

以下では,早期適用に踏み切った理由のほか,適用準備を進めた際の重要論点や工夫された点などについて伺った。

管理負荷軽減の観点から

◆収益認識会計基準を早期適用された理由を教えて下さい。

高田  当社の場合,2021年3月期第1四半期から,「財務諸表の国際的な比較可能性を高めること」および「会計基準の統一によるグループ経営管理の向上」を目的に,IFRSを任意適用することとしております(2019年11月6日に発表)。

従って,収益認識会計基準に限定して早期適用を考えたというよりは,もともとIFRSを2021年3月期から適用するという背景があり,そこから早期適用に関する検討が始まりました。

日本基準との二重管理は極力避けたいと考えていましたので,日本基準の収益認識会計基準がIFRSとほぼ同等となり,なおかつ早期適用が可能となったことを受けて,管理負荷軽減の観点から早期適用に舵を切りました。

また,当社では,IFRSを経営管理に資するかたちでも運用するという方針の下,日本基準からの組み替えではなく,IFRSをベースとした準備を進めていたことも速やかに早期適用に踏み切った理由となります。

◆適用の準備として,「いつ」・「何に」取り組まれたかを,時系列で教えて下さい。まず,IFRS任意適用の意思決定はいつ頃だったのでしょうか。

高田 IFRS任意適用の意思決定をしたのは,2016年の5月ぐらいです。そこから準備を開始し,2020年3月期が並行開示期間ですので,IFRSで対外開示を始めるのは2021年3月...