ハーフタイム 事業会社から見える監査人への期待ギャップ

解説
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筆者が監査法人を退職し,事業会社(一部上場企業)に転職したときに,最もギャップを感じたのは財務諸表の作成において「何を大事にするか」だ。監査法人時代は,「正しいこと」が最も重要であり,少し手間をかけても,より完璧に近づくならばやればいいと思っていた。しかし事業会社では違う。適正なのであれば,それ以上細かい点で完璧を求めるよりも,より「効率的」でより「会社の意向が反映されている」方が良いのである。

なぜ会社側が効率を重視するかといえば,作る側とチェックする側の立場の違いに尽きる。もちろん間違いは正す必要があるが,「こっちの方がより美しい」的な指摘は,会社側のレベルや志向にもよるものの,ありがた迷惑になりがちである。特に若手会計士に伝えたいのだが,これは思っている以上にギャップがある。財務諸表を作成するための段取りは,想像するよりも手間がかかる。優秀なパートナーは,それに水を差すような指摘はしない。若手の皆さんは,自分の振る舞いを「クライアントとの関係構築」という視点で振り返ってみてほしい。

次に,なぜ会社の意向が反映されている方が良いか,についてである。会社は中期経営計画等で...