時事談論 vol.45「会計上の見積りを取り巻くトライアングル体制」

解説
( 42頁)

●会計上の見積りの注記の充実

財務諸表には,様々な見積りの要素が含まれている。基本的なものとしては,貸付金や売掛金に対する貸倒引当金や製品保証引当金,有形資産や無形資産の償却にかかる耐用年数,工事契約,訴訟等に伴う偶発損失等がある。それに加えて,近年では,公正価値評価の浸透もあって,財務諸表項目の全般にわたって見積りが含まれてきている。例えば,活発な公開市場で取引されていない複雑な金融商品,ストック・オプション等の業績連動報酬,のれんや無形資産等の企業結合で取得した資産又は負債等があげられる。

財務諸表は,記録と慣習と判断の綜合的表現と言われるが,現在の財務諸表は,見積りに関する多様で複雑な判断を含んでいる。これらの判断は,最終的に財務諸表本体に計上されている財務数値に帰着されるが,財務諸表の利用者からすれば,財務数値だけを見ても,そこに至る見積りの背景となる事実認識や経営者の判断を窺い知ることはできない。そこで,財務数値に至る判断のプロセスを説明する注記や,経営者の判断や分析を定性的な情報として開示することが求められる。一般に,原則主義をとる国際財務報告基準(IFRS)適...