新型コロナウイルス問題と,3月末決算における監査対応について

解説

青山学院大学名誉教授 大原大学院大学教授 八田 進二

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世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響は,企業等の経済活動のみならず,世界の主要国における市民生活にまで及んできている。とりわけ,人の移動が大きく制限されており,感染国に含まれる日本からの入国については,ほとんどの国において制限がなされているのである。こうした状況下において,上場会社の6割超の会社が3月決算を採用していることから,そこでの監査対応として,今後,いかなる問題が想定されるのかについて,考えることとする。

1.企業の決算作業の遅れと情報開示について

今般の新型コロナウイルス感染症に関連して決算作業等に遅れが生じる場合については,すでに,去る2月10日,金融庁は「新型コロナウイルス感染症に関連する有価証券報告書等の提出について」を公表して,「やむを得ない理由により期限までに提出できない場合には,財務(支)局長の承認により提出期限を延長することが認められている」との通知を発している。また,同日,東京証券取引所(以下,東証)も「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い」を発出して,①有...