[全文公開] 本誌調査(4月末時点) 3月期短信開示は260社 3割強が通期の業績予想を開示

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「上期にコロナ収束」などの仮定も
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例年多くの3月期の企業が決算短信を発表する時期だが,本年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け,発表を延期する会社が増加している。本誌調査では,446社が決算発表を予定より後ろ倒しにすると適時開示していた(4月末日時点)。一方で3月期決算短信を公表した企業は260社だった。このうち通期の業績予想については3割強が開示。収束時期を設定し,上期や第2四半期以降に回復していくと仮定した企業が見られた。

延期の理由にテレワーク推進なども

決算発表については,東京証券取引所が「45日以内」などの時期にとらわれず,確定次第開示することを容認している。有価証券報告書等の提出期限も,開示府令の改正により9月末まで延長された( No.3455・4頁 )。

本誌調査では,4月14日時点で35社が決算短信または四半期短信の公表延期を適時開示していた( No.3454・8頁 )。このほど,改めて上場企業の決算発表状況を調べたところ,4月末日時点で合計446社が決算短信・四半期短信の公表を延期していたことがわかった(「延期する可能性」を表明した会社,延期表明後に決算を公表した会社を含む)。全上場企業の1割超が延期を表明したことになる。

延期の理由として,会計・監査業務の遅れを上げているケースが多い。特に海外拠点を持つ企業では,現地のロックダウン・感染拡大防止措置により,決算手続きが遅れている。ほか,従業員や監査法人の安全確保,国の緊急事態宣言や1都3県共同キャンペーン「いのちを守る STAY HOME週間」などを受けた,連続休暇取得やテレワークの推進などを理由に挙げる企業も見られた。

延期した446社の内訳は,2月期が9社,3月期が377社,12月期第1四半期が42社,9月期第2四半期が9社,6月期第3四半期が7社,10月期第2四半期と3月期第3四半期が各1社。

製造業などで「未定」めだつ

2020年3月期のうち,決算短信を公表した企業は260社だ。

業績予想については,現時点では合理的な算定が困難だとして「未定」としたのが144社(55.4%)。業種別では製造業が多く,輸送用機器が14社中13社,電気機器が22社中11社,機械は15社中8社が該当した。ほか,鉄道などの陸運業は14社中13社,空運業は3社中3社が「未定」だった。

開示内容を見ると,主にサマリーの業績予想枠外の注書きで「2021年3月期の連結業績予想につきましては,新型コロナウイルス感染症による影響を現時点で合理的に算定することが困難であることから,開示しておりません」とし,開示が可能となったら速やかに公表する旨を記載している場合が多い。コネクシオ(東一,情報・通信業)は,添付資料において「依然として今後の展開が見通せない状況ではありますが,収束時期等について一定の前提を置いた上で何らかの業績予想を開示できないか,現在鋭意分析と試算を行っているところです」と記載していた。

未定としながらも,「新型コロナウイルス感染症拡大に伴うリスク情報」という項目を立てるケースも複数見られる。プラマテルズ(JQ,卸売業)は,生産拠点等の稼働状況,経営成績への影響や今後の想定などを記載した。財務状況などにも触れている。

また,信越化学工業(東一,化学)のように,「会社の対処すべき課題」として,コロナ禍が及ぼす影響を最小限に抑えることや「コロナ禍後」に備える旨を開示した事例もあった。

収束時期を記載する事例

一方,通期(2021年3月期)の業績予想を開示したのは89社。うち52社は第2四半期までの見通しも示している。

業績予想を立てるには,今後コロナの影響がどれほど続くかなど,一定の見積りや仮定を置く必要がある。仮定として多く見られたのは「上期(第2四半期まで)に収束し,下期(第3四半期から)に回復」や,「第2四半期(7月から)に回復」といった見通しだ。以下のような記載が見られた(抜粋)。

・京セラ(東一,電気機器)
 「具体的な業績予想は下表のとおりです。新型コロナウイルス感染症の拡大により,世界景気は翌第1四半期連結会計期間(2020年4月1日から2020年6月30日まで)までは現在の不安定な状況が続くものの,翌第2四半期連結会計期間(2020年7月1日から2020年9月30日まで)以降は,翌連結会計年度末に向けて徐々に回復が進んでいくものと仮定し,算出しています。」
・日本精化(東一,化学)
 「新型コロナウイルス感染症による当社業績への影響は,2021年3月期の年度末まで継続すると想定しております。感染症拡大の最悪期は日本を含む世界各国で4~6月まで続き,7月以降,各国の経済活動は徐々に正常化に向けて再開するとみておりますが,世界的な景気悪化による影響は年度末まで続くと想定しております。」

ほか,日本精線(東一,鉄鋼)は,製品ごとの売上減少率を設定した上で,第2四半期の予想を開示。ゲンダイエージェンシー(JQ,情報・通信業)は,「感染状況改善期(2020/07~2020/09)において広告受注5割減」などの仮定を置き,新型コロナ関連影響額の試算を図表で示している。

商船三井(東一,海運業)は,第1四半期と通期の連結経常損益のみ予想を開示。「半年で収束に向かうケースと,1年継続するケースの2つを想定して」通期の予想はレンジで試算していた。

業績予想にコロナの影響を加味しなかった事例も12社あった。メタウォーター(東一,電気・ガス業)は,「新型コロナウイルスの感染拡大の影響につきましては,現時点では今後の動向が不透明であることから,上記計画に織り込んでおりません」と注書きに記載した。

決算発表は月末に急増

決算発表の所要日数を見ると,東証上場会社のうち4月30日までに短信を公表したのは251社だった。東証が昨年公表した「2019年3月期決算発表状況の集計結果について」では,4月30日までに(期末からの所要日数が30日)発表したのが累計336社だったことと比べると,本年はやや減少したといえる。4月26~30日の間に相当程度増加したこともわかる(図表)。

【図表】2020年3月期決算発表の状況(4月末時点)

決算期 期末から30日時点での累計社数 期末からの所要日数
~20日 ~25日 ~30日
2020年
3月期
251 5 32 223
累計 5 37 260
2019年
3月期
336 11 133 192
累計 11 144 336
※2019年3月期は東証公表資料「2019年3月期決算発表状況の集計結果について」を参照。2020年3月期は本誌調査。