[全文公開] 金融庁 新型コロナの影響に関する記述情報の開示Q&A公表

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投資家が期待する好開示のポイントを紹介
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金融庁は5月29日,「新型コロナウイルス感染症の影響に関する記述情報の開示Q&A-投資家が期待する好開示のポイント-」を公表した。「記述情報の開示の好事例集」のための勉強会に参加している投資家・アナリストの意見を踏まえ,有価証券報告書の記述情報における新型コロナの影響に関する開示について,投資家等が期待する好開示のポイントをQ&Aとしてまとめたものだ。なお, 本号14頁 には本Q&Aについて金融庁による解説を掲載している。

経営者の視点による充実した開示に期待

2020年3月期から,有価証券報告書における経営方針,事業等のリスク,経営者による財政状態,経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)等の記述情報について,開示の充実を求める改正内閣府令(平成31年内閣府令第3号)が適用された。取締役会や経営会議における,経営方針・業績評価・経営リスクに関する議論や資本コストに関する議論等,経営者の視点での開示の充実が求められている。

本Q&Aは,記述情報の開示充実のためのガイダンスとして金融庁が公表した「記述情報の開示に関する原則」(2019年3月19日)に沿いながら,新型コロナの影響について,「ルールへの形式的な対応にとどまらない開示の充実に向けた企業の取組みを促すこと」を目的として作成したもの。これにより新たな開示事項を加えるものではない。

金融庁は本Q&Aの公表にあたり,新型コロナの影響に関する開示についても,改正内閣府令の考え方に基づき経営者の視点による充実した開示が強く期待されるとしている。

会計上の見積りの記載に関するQAなど

本Q&Aは,「記述情報の開示に関する原則」の概要や,新型コロナの影響についての記述情報の開示に関する10のQ&Aからなり,「Q1.経営方針,経営環境及び対処すべき課題等の記載内容」,「Q2.事業等のリスクの記載内容」,「Q6.会計上の見積りの記載内容」,「Q10.将来情報における事後的な事象の変化に係る開示の考え方」などが取り上げられている。

例えばQ6では,新型コロナの影響について,企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した議事概要(4月10日公表,5月11日追補)に基づき「追加情報」として注記した場合,MD&Aにおける「会計上の見積り」の記載は省略できるか,との疑問が掲載されている。

この点については,財務情報における「追加情報」や他の注記において, MD&Aの「会計上の見積り」で記載が求められている事項の全部または一部を記載した場合には ,MD&Aにおける「会計上の見積り」においてその旨を記載することで「追加情報」等に記載した事項を省略可能とされる。ただし本Q&Aによると,「追加情報」等において具体的に記載しきれない場合には,その補足として,MD&Aの「会計上の見積り」においても記載することが重要との考えが示されており,MD&Aの「会計上の見積り」においても,見積りに用いた仮定に加え,その仮定を選択した背景や当該仮定が変動することによる経営成績等への影響についての記載が期待されるという。