時事談論 vol.61「『企業継続の前提』は示されているか?」

解説
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●今までどおりではない

都心の大型ビルに終日いて,外の様子がわからないのと違い,あばら家では少し風が吹いても,少々の雨音もよく聞こえる。座りっぱなしを解消したくて,立ち上がって窓の外を見ることが増えた。4か月前とは違う。

「昭和のおじさん」にこの先の変化はとても見通せないが,どうやら逃げ切りは難しいみたいだ。言うまでもなく「今までどおりではない」。社会に必要とされるサービスが変化し,事業者と顧客の力関係も変わる。つい半年前までうまくいっていたビジネスが,中断後に元のようになる保証はない。

これまで私たちは,わざわざ言わなくてもわかってもらえていたことに助けられ,甘えてきた気がする。「野暮なこと」とか「阿吽の呼吸」とか。それは個人的な人付き合いだけでなく,企業と投資家,ステークホルダーとの関係もそうなのでは,と思う。そんな蜜月もそろそろ幕引きかもしれない。

●継続企業の前提

Going Concernと言った方がわかりやすい気もするが,日本語だとこうなる。会計のルール全般は基本的に企業が継続することを前提として整備されている。したがって,その前提に疑義が生じている場合は,その旨を財...