書評 水口啓子著『本気で取り組む ガバナンス・開示改革‐経営者とアナリストによる価値共創‐』

解説

日本公認会計士協会 会長 手塚正彦

(中央経済社刊/本体2,300円+税)
( 34頁)

まさに「時宜にかなった」テーマ

経験豊かな気鋭のアナリストによる,まさに時宜にかなった1冊である。日本は,人生100年時代と人口減少という難題に同時に直面している。国民が今後も豊かな暮らしを維持していくためには,企業や経済の持続的成長のための資金を適切に供給し,国民あるいは投資家に安定的な資産形成の手段を提供する金融資本市場が規律正しく活発に機能することが必須である。そのためには,「企業情報の適切な開示」を前提とした「企業と投資家との建設的な対話」の促進が必要であり,アナリストという投資家側の立場から,この課題に真正面から取り組んでいる。

本書の構成

本書は7つの章と補章から成る。第1章は,今なぜガバナンス・企業開示改革が求められるのかについて解説し,第2章において,アナリストの視点の根幹となる「経営基盤」の評価について記述している。そして,第3章から第6章において,経営戦略とビジネスモデル,リスク管理(ERM),ガバナンスの実効性,ESGの財務への影響,についてアナリストの視点を具体的に紹介している。そ...