企業内容開示制度の実効性確保に向けて 第3回 有価証券報告書の開示改正を機会とした企業活動の改善

有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 濵口 豊

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1.はじめに

本企画では,企業内容開示制度の実効性確保に向けた課題や今後の取り組みの方向性について,全8回にわたって解説することとしている。

企業内容開示に関しては,2019年1月31日に企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され,有価証券報告書の記述情報の充実に向けて各社で取り組みが行われてきた。この取り組みのなかには,改正に対応する開示の見直しに留まらず,今回の改正を自社の企業価値向上の有効な機会として捉え,より本質的な観点から,企業活動やプロセスも含めて見直し,改善しているケースも見られる。

そこで,第3回の本稿では,開示改正を契機とした概念や情報の再整理,それらを通じた企業活動そのものの改善について考えてみたい。また,第2回( 本誌No.3471 )では英国の開示実務を紹介しているが,本稿でも同様に参考となる先進事例として紹介したい。

なお,文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり,有限責任監査法人トーマツの公式見解でないことを予め申し上げる。

2.リスク情報項目の再整理と活動への反映

2019年における内閣府令の改正項目のなかでも,実務に大きな影響を与えたと思われるのが事業等のリスクの...