IFRSをめぐる動向 第126回 サッカー業界における選手移籍金(IAS第38号「無形資産」)に関するアジェンダ決定

PwCあらた有限責任監査法人 公認会計士 井上 雅子

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はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。今回は,IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)で検討された「選手移籍金」に関するアジェンダ決定について説明します。

IFRS ICは,関係者から寄せられた実務上の問題に関する要望書について検討を行い,基準開発のアジェンダに追加すべきか否かの評価を行っています。このプロセスは,企業によるIFRSの適用をサポートする活動の一環として行われるものです。この評価の過程で,寄せられた要望書に関する論点を基準開発のアジェンダに追加しないことを決定した場合には,IFRSの適用に関するIFRS ICの見解とともに,「アジェンダ決定」として一般に公表されます。「アジェンダ決定」は,IFRS ICが基準設定プロジェクトをワークプランに追加しなかった理由を説明するものであり,多くの場合,IFRS適用について首尾一貫性を改善するために,説明資料が含められています。

アジェンダ決定(説明資料を含む)自体は,IFRSの要求事項を追加または変更することはできませんが,IFRS...