会計知識録 第8回 減損損失は無かったことにできるの?減損会計~経営判断と会計判断の交差点~を考える

~企業の会計・財務活動を解読~

 公認会計士 溝口 聖規

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減損の検討プロセス

減損会計とは,資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合,その価値の下落を当該資産の帳簿価額に反映させる手続きを言います。会計上,減損は全ての資産について適用される考え方ですが,通常は,土地,建物,機械装置などの有形固定資産や,のれん,ソフトウエアなどの無形固定資産が減損会計の対象となります。したがって,本稿においては,有形固定資産,無形固定資産を含む固定資産を減損会計の対象として話を進めます。

原則として,固定資産は取得原価で貸借対照表(B/S)に計上されます。なお,建物や機械装置のような減価償却性の資産は,取得価額から減価償却累計額を控除した金額で計上されます。そのため,決算期末における固定資産の時価 (注1) と帳簿価額は乖離することが通常です。決算期末における固定資産の帳簿価額と時価が大きく乖離する場合に,固定資産の帳簿価額を時価まで切り下げる会計処理が減損処理です。

(注1)減損会計では,回収可能価額(後述)と言いますが,ここでは分かりやすく時価と表現します。

まず,減損の検討プロセスについて見ていきましょう。

【図表1】減損の検討プロセス

1.固定資産のグ...