国際会計基準審議会（IASB）前理事　鶯地　隆継

トラベラーズ・チェック

トラベラーズ・チェックをお使いになったことはおありだろうか。2014年に販売停止となったが，昔は海外旅行に行く時は必ずトラベラーズ・チェックを準備した。トラベラーズ・チェックの準備をすると，海外旅行に行くという気分が盛り上がりワクワクしたのを覚えている。ただ，トラベラーズ・チェックをたくさん作っても，実際にはあまり使わず，未使用の束を持って帰って来たという経験をした人も多いと思う。帰国後にすぐに円に換えてしまえばいいのだが，手数料もかかるので，次の海外旅行の時に使おうとタンスにしまったままにすることが多かった。しかし次の海外旅行に行くまでにかなり円高になってしまって損をしたという苦い経験がある。

ところで，これは本当に損をしたのだろうか。次の海外旅行で残ったトラベラーズ・チェックを全部使ってしまえば損をしたことにはならない，とも言える。これと同じことが企業活動についても言える。海外で事業をし，例えば売上げはUSドル，仕入れもUSドル，経費もUSドルであれば，円高になったとしても関係ない。円高になったからと言って損をする訳ではない。その意味では，IAS第21号「外国為...