グループ通算制度適用に向けた検討事項

デロイト トーマツ税理士法人 公認会計士・税理士 大野久子

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1.はじめに

平成14年から適用されている連結納税制度は,100%の資本関係の内国法人のグループの所得・欠損を合算・相殺し,その結果である連結所得について連結親法人が納税主体となって代表して申告納税(以下「連結申告」)する制度である。グループ内の所得と欠損を相殺することができるため,グループ内の欠損を早期に生かして節税することができるという,いわゆる損益通算が最大のメリットとなっている。

しかし,全体を合算・相殺し,また一部の計算項目についての配賦計算が行われる仕組みであるため,税務調査等による修正・更正(以下「修更正」)の際にも全社再計算が必要となり,国税当局・納税者共に手間となっていた。

そこで,令和2年度税制改正により,損益通算のメリットを残しながら単体申告化するという抜本的見直しが行われることになり,名称も「グループ通算制度」に変更されることになった。グループ通算制度は約2年の猶予期間の後,令和4年4月1日以後開始事業年度から適用される(R2改正法附1五ロ,14)。現行の連結納税制度を適用している企業グループも,それ以降は原則としてグループ通算制度に自動移行する(R2改正法附29①)...