Q&Aコーナー 気になる論点(275) IASBにおける財務諸表の表示の改正案

‐わが国からのコメント‐

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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 IAS第1号「財務諸表の表示」を置き換えるように,2019年12月に公表された公開草案(ED)「全般的な表示及び開示」(IAS第1号改正案)に対するコメント期限は,9月30日でした。IAS第1号改正案は,営業利益の表示を提案しており,それは,わが国での取扱いに沿うため,賛成のコメントが多かったのでしょうか。

わが国の主な関係者は,営業利益の表示については賛成していますが,残余として定義することについては反対しています。

<解説>

IAS第1号改正案の概要

IASBでは,財務報告におけるコミュニケーションの改善に関する作業の一部である基本財務諸表プロジェクトにおいて,IAS第1号改正案を公表し(BC4項),主に以下を提案しています(BC12項)。

(1)損益計算書において,営業利益などの小計を表示する(60項)。

(2)不可分の及び不可分でない関連会社及び共同支配企業に対する投資から生じる収益・費用やキャッシュ・フローを区分して表示する(53項,IAS第7号38A項)。

(3)レリバントな情報を提供するために,分解表示の原則,営業費用の性質別又は機能別のいずれかによる分解,多額の「その他」項目の...