不正事例に学ぶ子会社のリスク管理のポイント 第10回 内部統制評価のポイント~弱点の把握

有限責任 あずさ監査法人 リスクマネジメント部 パートナー 細井 友美子

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1.内部統制の弱点とは

内部統制とは,業務の有効性及び効率性,財務報告の信頼性,事業活動に関わる法令等の遵守,資産の保全を確保するために経営者が構築する仕組みです。

例えば販売プロセスでは,顧客から注文を受けてから出荷,売上計上,代金回収に至るまでの職務権限を複数の担当者に分けて,それぞれ上席者が承認する内部統制を構築しますが,ベテラン営業担当者にこれらのすべての業務を任せてしまい,上席者もその担当者に任せきりで取引の実態を確かめていない状況になると,そのような内部統制のスキを突いて不正な売上計上を可能とする環境ができてしまいます。

JSOXが導入され10年以上が経過し,企業では売上や利益等に重要な割合を占める部署や子会社における内部統制を評価していますが,書類が揃っているか?チェックの形跡があるか?といった形式面が優先されがちであるなど,制度であるが故の形骸化もないとは言えません。内部統制の評価は制度で求められているから行うものではなく,組織として誤りや不正が生じないように,業務が有効に効率的に機能しているか?という実態を確かめるために行うものであると意識することが重要です。

さらに,JSO...